茨の蕾は綻び溢れる〜クールな同期はいばら姫を離さない〜
(け、結婚……?)

好きだとは昨日も言われたものの、まさか彼が結婚まで考えているとは思わず、百子は狼狽して陽翔の喉仏辺りに視線を彷徨わせる。

「東雲くん……わ、私と……結婚……」

うわ言のように百子が呟き、顔どころか首まで赤くしている彼女を見て、陽翔は片手を彼女の肩に起き、もう片方の手で髪を梳く。

「大学の時からずっと好きだった。お前は彼氏のことを嬉しそうに話してたから、幸せになってほしいと思いながら見てた。だが百子が元彼に浮気されて悲しんでるところを見たら、何がなんでも俺が幸せにしたいと思ったんだ。一緒に住むようになったらもっとその気持ちは大きくなった。だから百子、俺の側にいてくれ」

百子の眉が下がり、みるみるうちに両目が潤んだと思えば、それらは雫となってはらはらと落ち、パジャマのズボンにしみをつくる。

「私……東雲、くんを好きに、なって、いい、の?」

「……! ああ! なってくれ……!」

彼女の涙を見てぎょっとしていた陽翔だったが、彼女の口から肯定的な言葉が出て思わず胸の奥が熱くなり、思わず彼女の両肩をつかむ手に力が入る。

「……きらいに、ならない……? 離れていったり、しない?」

「……っ!」

百子がそう言い終わらないうちに、気がついたら百子は背中に彼の両腕が回され、彼の胸板の熱さを感じていた。彼の体温に染まるがごとく、高鳴る胸は収まる気配をまるで見せない。

「離れるつもりも、離すつもりもねえよ……!」

百子がぎゅっと陽翔のパジャマを掴む。陽翔は滾る血潮に浮かされて、百子を少しだけ離したかと思うとその唇に口づけした。百子が少しだけ舌を入れてきたので、性急に自分の舌をするりと彼女の口に侵入させて絡ませる。ミントの香りと清涼感のためか、陽翔が舌のみならず、上顎や舌の裏まで丁寧に舌でなぞるので、百子は早くも力が抜けてしまう。唇が離れると、陽翔の胸にくったりと体を預けてしまった。

「俺もだ。一緒に料理している時とか、ご飯を食べてる時なんかは、本当の夫婦みたいだなと何度も思ってた」

「……私も、東雲くんと一緒にいるのが楽しい。また家とか……元彼のことで……色々泣くかもしれないけど……」

「別にいい。百子の傷が癒えるまで、いや、ずっと俺が支えるから。まだ傷が癒えてなくても、ここに百子を愛しく思う人間がいることは忘れないでくれ」

百子が頷くと、陽翔は彼女の涙を指で拭い、彼女の額にキスを落とした。そして彼女を抱き上げたかと思うと、部屋にあるベットにゆっくりと彼女を下ろした。
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