私にワルイコトを教えたのは政略結婚の旦那様でした
このお金で日頃の感謝を込めて、炯さんになにかプレゼントを買うのはどうだろう?
凄くいいアイディアな気がする。

「なにがいいかな……」

炯さんが喜んでくれそうなものってなんだろう?
お酒とか?
しかしいくら考えたところで、まだ二ヶ月足らずの付き合いの私には、彼の好みはよくわからなかった。
だったら。

「スミさん」

「はい、なんでしょう」

通りかかった彼女を呼び止めると、すぐにこちらへ来てくれた。

「その。
炯さんになにかプレゼントをしたいんですが、なにがいいんでしょうか……?」

「プレゼントでございますか?」

不思議そうに彼女が、何度か瞬きをする。

「はい。
初めてお給料をもらったので、それでなにか買いたいなと思って」

「いい考えでございます!」

スミさんが私の手を取り、ぐいっと顔を近づけてくるものだから、背中が仰け反った。

「絶対坊ちゃん、お喜びになりますよ!」

「そ、そうですか……?」

「はい」

力強く言い切り、スミさんがようやく私から離れる。

「それで。
なにがいいかというお話でございましたね」
< 100 / 236 >

この作品をシェア

pagetop