私にワルイコトを教えたのは政略結婚の旦那様でした
「はい。
まだ私、炯さんがなんだったら喜んでくれるのかとか全然わからなくて……」

小さい頃からの付き合いのスミさんなら、なにかいいアイディアをくれると思ったものの。

「凛音様からのプレゼントなら、なんだってお喜びになりますよ」

「ハイ……?」

なにを言われているのかわからなくて、首が斜めに傾く。
いやいや、全然好みじゃないものをもらっても困らない?
私だったらいかめしいドクロのリングとかもらっても、困る。

「えっと……。
なんでもというわけには……」

私の戸惑いに気づいたのか、スミさんは取り繕うように小さく笑った。

「確かにそうでございますね。
でしたら、ボールペンなどいかがでしょう?」

「ボールペン?」

なんだか思ったよりもチープなものが出てきて、また首が斜めに傾く。
しかしスミさんは、それで決まりだとでもいうようにうんうんと何度か頷いた。

「坊ちゃん、ボールペンをよくおなくしになるんですよ。
それでよく、新しいものを買っておいてくれと頼まれて」

「そうなんですね」

炯さんはしっかりして見えるから、よくものをなくすなんてなんか意外だ。
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