私にワルイコトを教えたのは政略結婚の旦那様でした

『いい男ですよ』

さらりと返し、残りを食べてしまう。

『僕よりいい男なんて、そうそういないと思うんだけどな』

気づいたら彼は、頬杖をついて私を見ていた。
そんな自信はどこから出てくるんだとは思うが、世間一般的に教授はかなりイケメンの部類なのだ。
学生の中には狙っている人もいるって話を聞くし。

『私にとって婚約者の彼が世界で一番いい男、です』

惚気と取られてもいいので、言い切った。
それに、事実だし。

『ふーん』

教授はどうでもよさそうだが、私も彼の返事などどうでもよかった。

『それで。
婚約者の彼にプレゼントするのになにがいいかって話だったよね?』

話が本題に戻ってきたが、彼の意見を参考にする気はない。
他の男性の欲しいものを参考にするとか、炯さんに悪いもの。

『僕だったら、凛音からもらえるものならなんでも嬉しいな』

「……は?」

実に締まらない顔で、教授がにへらと笑う。
その顔を素になって見ていた。
スミさんや島西さんに言われたからじゃないが、炯さんならわかる。
なにかと私にかまいたがる彼だ、私が彼になにかすれば喜ぶに決まっている。
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