私にワルイコトを教えたのは政略結婚の旦那様でした
とにかくなにがなんでも帰ってきたいのはわかったが、こんな時間に空港から二時間近くかけて帰ってくるのは心配だ。

「……そうだ」

今日は私がマンションのほうに泊まるというのはどうだろう。
それだったら移動時間は半分で済む。
明日は私も炯さんも休みだし、そのままゆっくりして夕方にでも本宅に帰ればいい。
でも、シェフがもう夕食の準備をしているのだとしたら申し訳ない。

「ミドリさん。
今日はこのままマンションのほうに泊まるとか、ダメですか……?
あ、もう夕食の準備をしているとかだったら、帰ります」

「いえ、大丈夫です。
そのように手配します」

すぐにミドリさんはどこかへ電話をかけはじめた。
たぶん、スミさんかな?

「シェフ、怒ってませんでしたか?」

電話を切った彼女につい、聞いてしまう。

「どうして怒るんですか?」

なぜか不思議そうに彼女は、何度か瞬きをした。

「せっかく準備していたのに、無駄にしてしまったから……」

「急な予定変更はよくあることですから、気にしません」

ミドリさんはそれが至極当たり前といった感じだが。
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