私にワルイコトを教えたのは政略結婚の旦那様でした
「起きなきゃ……」

起き上がったものの、そのままぽすっと前向きに倒れ込む。
いやいや、そんな場合じゃないんだって。

「うーっ」

根性で今度こそ起き上がった。
炯さんをお出迎えするために、通知をONにして寝たのだ。
起きなきゃ、意味がない。

「顔洗おう……」

ふらふらと洗面所へ向かい、顔を洗う。
それでようやく、頭がすっきりした。
ついでに、浴槽にお湯を張る。
帰ってきたらゆっくり、手足を伸ばしてお風呂に浸かりたいかもしれないし。

着替えまではしないが、簡単に身支度を調える。
まさか、寝起きのままでお出迎えなんてできない。

コーヒーを淹れてゆっくりと飲む。
飲み終わって簡単に片付けを済ませた頃、ドアの開く音がした。

「おかえりなさい」

「びっくりした。
まさか、寝ないで待っていたのか」

私を抱き締め、軽く炯さんがキスしてくる。

「ちょっと早めに寝て、起きました」

もうすぐ四時半になろうかという頃。
少しの早起きだと思えば、さほどつらくない。

「もしかして起こしたか?」

眼鏡の下で彼の眉間に皺が寄る。
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