私にワルイコトを教えたのは政略結婚の旦那様でした
「夢中になって話している凛音はキラキラしていて、いつまででも見ていられる」

離した指先を、炯さんはまるで見せつけるかのようにペロリと舐めた。

「クリーム、ついてたぞ」

「えっ、あっ、……はい」

目尻を下げ、彼がにっこりと微笑みかける。
おかげでみるみる顔が熱を持っていった。
……炯さん、狡い。
こんなに格好いいの、どきどきするなっていうほうが無理じゃない。

そのあともいないあいだにあった出来事を話しながら、紅茶を飲みつつスイーツを摘まむ。

「そろそろドレスの打ち合わせをしないといけないが、どうする?」

「そうですね……」

そうか、私、炯さんと結婚式を挙げるんだ。
彼との生活は幸せで、そんなことすら忘れていた。

「ドレスはもちろんだが、俺は凛音の白無垢姿も見てみたいんだよなー。
見合いのときの振り袖、よく似合ってたし」

想像しているのか、炯さんがうっとりとした顔になる。

「式はドレスで、白無垢は写真にするか。
いや、いっそドレスと白無垢で二回、式を挙げるか……」

真剣に彼は悩んでいて、ちょっとおかしい。

「二回も挙げるんですか?」

「いいだろ?」

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