私にワルイコトを教えたのは政略結婚の旦那様でした
眼鏡の陰でコマキさんの目尻が下がる。
それを見て頬が熱くなっていき、俯いて残りのハンバーガーをもそもそと食べた。



「さて。
腹ごしらえも済んだし、次はカラオケに行くか」

「はい」

片付けをして店を出る。
楽しそうにゴミを捨てる私をコマキさんは笑って見ていて、性格悪いと思う。
でもそういう、普段私がやらない、普通なら当たり前のことが面白くて堪らないのだ。

少し歩いてビルに入る、カラオケ店に彼は私を連れてきてくれた。

「なんでも好きなモノを入れろ」

「はい……」

端末を前にしてふと気づく。
カラオケには来てみたかったが、私ははやりの歌などなにひとつ知らないのだ!

「えっと……。
コマキさんが、入れてください」

彼の前にもあるというのに、なんとなく目の前に置かれた端末を避けるようにそちらへと押す。

「せっかくカラオケに来たのに、自分で歌わないと意味ないだろうが」

彼は呆れているが、そのとおりだとは思う。

「別に歌が酷く下手だったとしても笑わないぞ。
それにきっと、二度と会わない相手だ。
旅の恥はかき捨てじゃないが、気にしなくていい」

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