私にワルイコトを教えたのは政略結婚の旦那様でした
第六章 ワルイコトはイケナイコトです
珍しく、炯さんはしばらくこちらにいるらしい。

「俺がいるのが不満か?」

朝食の席で、右の口端を持ち上げて彼がからかうように笑う。

「不満とかないですよ」

熱を持つ顔で怒ってみせ、そっぽを向いた。
本当は嬉しい癖に、素直に言えない自分が嫌になる。

「少しはゆっくりできるから、かまってやれると思う。
結婚式の打ち合わせも進めないとな」

「そうですね」

披露宴は両親たちにほぼ丸投げしているが、結婚式はそうはいかない。
いや、別に丸投げしたところで父などは喜びそうだが、式くらいは私たちの希望を通したかった。

「そうなると忙しくなるから……やっぱりゆっくりはできないか」

困ったように炯さんが笑う。

「でも、お式が終わったらゆっくりできますよ、きっと」

「そうだな」

笑って炯さんはコーヒーのカップを口に運んだ。
本当は式の準備なんて全部私がやって、炯さんはゆっくり休めたらいいのだけれど、そうはいかない。
いや、少しでも私がやって、休んでもらうんだ。

今朝は職場まで炯さんが送ってくれた。

「いってきます」

「ああ。
頑張ってこい」

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