私にワルイコトを教えたのは政略結婚の旦那様でした
「お仕事、大変なんですよね……」

「そうだな、海賊と渡りあったりもするしな」

炯さんの身になにかあったらと考えて、身体がぶるりと震えた。
思わずぎゅっと彼に抱きつく。

「凛音?」

「ご無事に帰ってきてよかったです」

炯さんの仕事はこんなに危険なものなのだ。
いつ、何時、なにがあるのかわからない。
今まで無事に帰ってきたのも、奇跡なのかもしれない。

「……そんなに心配しなくても大丈夫だ」

あやすように軽く、彼が私の背中をぽんぽんと叩く。

「現地のコーディネーターがあいだに入ってくれるし、ボディーガードも雇ってる。
それに俺、逃げ足だけは速いからな」

「逃げ足が速い、ですか?」

ふふっとおかしそうに笑い、炯さんは私の顔を見た。

「そうだ。
ラグビーの試合ではボールを掴んだ俺を誰も止められなかった。
これでも大学生ラグビーでは得点王だったんだぞ?」

私にはそれがどれくらい凄いのかわからない。
でも、彼は自信満々でちょっぴりだけれど安心した。

「私より先に死んじゃダメです。
小さな怪我は仕方ないですけど、大怪我はダメ」

「わかった、約束する」

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