私にワルイコトを教えたのは政略結婚の旦那様でした
彼が私の前に小指を差し出してくる。
意味がわからなくてしばらく見つめていたら、促すように軽く揺らされた。
それでようやく彼がなにをしたいのか理解し、自分の小指をそれに絡める。
「俺は絶対に凛音より先に死なないし、大怪我もしない。
約束破ったときは……そのときはもう、凛音に詫びられないな」
困ったように炯さんは笑った。
「絶対に約束を破らなかったらいいだけです」
「そうだな。
約束する」
揺らされた小指が離れていき、ふたり見つめあう。
どちらからともなく、唇が重なった。
「……父さんが俺に、結婚を勧めたがった理由がわかるかもしれない」
唇が離れ、そっと炯さんの手が私の頬に触れる。
「凛音を残して先になんて逝けないからな」
眼鏡の向こうで炯さんの目が泣き出しそうに歪む。
「そうですよ、私をひとりにしないで。
約束です」
「ああ」
もう一度軽く、彼の唇が重なる。
大事な大事な、私の旦那様。
これから彼がいない日は、神様にその無事を祈ろう。
お守りも買おうかな。
翌日は通常業務をこなしつつ、ベーデガー教授依頼の文献を探す。
意味がわからなくてしばらく見つめていたら、促すように軽く揺らされた。
それでようやく彼がなにをしたいのか理解し、自分の小指をそれに絡める。
「俺は絶対に凛音より先に死なないし、大怪我もしない。
約束破ったときは……そのときはもう、凛音に詫びられないな」
困ったように炯さんは笑った。
「絶対に約束を破らなかったらいいだけです」
「そうだな。
約束する」
揺らされた小指が離れていき、ふたり見つめあう。
どちらからともなく、唇が重なった。
「……父さんが俺に、結婚を勧めたがった理由がわかるかもしれない」
唇が離れ、そっと炯さんの手が私の頬に触れる。
「凛音を残して先になんて逝けないからな」
眼鏡の向こうで炯さんの目が泣き出しそうに歪む。
「そうですよ、私をひとりにしないで。
約束です」
「ああ」
もう一度軽く、彼の唇が重なる。
大事な大事な、私の旦那様。
これから彼がいない日は、神様にその無事を祈ろう。
お守りも買おうかな。
翌日は通常業務をこなしつつ、ベーデガー教授依頼の文献を探す。