私にワルイコトを教えたのは政略結婚の旦那様でした
「お祭りに行かれるのでしたら、凛音様と坊ちゃんの浴衣を新調しましょう!」

もう決まりだとばかりに、スミさんはそわそわとしている。
しかしそれには、問題があるのだ。

「ど、どれくらいかかるんでしょう……?」

たぶん、なじみの呉服店に頼むんだと思う。
そうなると、私の稼ぎで足りるのか心配だ。
……そう。
〝悪いこと〟をして遊ぶお金は、稼いだお給料でまかなうと決めている。
それはスミさんも知っていた。

「まあまあ。
そんなの、気になさらないでいいんですよ」

「でも……」

これは私の悪い遊びなのだ。
なのに、浴衣を買ってもらうとかできない。

「どのみち、協賛のご挨拶に行かないといけませんからね、奥様としてのお努めのようなものです。
だから、気になさらないでください」

「奥様としての務め……」

そうか、籍はまだ入れていないとはいえ、もう私はほぼ炯さんの奥さんなんだ。
気づくと同時にみるみる顔が熱くなっていき、いたたまれなくなってクッションで顔を隠した。

「わかり、ました」

それだとゆっくり屋台を見て回ったりできなさそうな気もするが、奥様としての務めなら仕方ない。
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