私にワルイコトを教えたのは政略結婚の旦那様でした
反物の上に炯さんが黒の帯を置く。
それはシックだけれど、どこか可愛らしく、私の好みにぴったりだった。

早速、スタッフに簡単に着付けてもらう。

「うん、凛音の顔ともあってる」

私の肩を軽く叩き、鏡越しに炯さんがにっこりと微笑む。

「気に入りました、これにします……!」

炯さんが私のために選んでくれた浴衣。
それにまだ浴衣っぽく仮置きしただけだが、こんなに似合っている。
これを選ばないなんてないだろう。

「そうか、よかった」

満足げに炯さんが頷く。
それで私も嬉しくなっちゃうのはなんでだろう?

そのあとはかんざしや帯締めなどの小物を選ぶ。
いつも下駄のときは鼻緒が擦れて皮が剥け、困っていたのだが、足袋を穿けばいいと教えてくれた。
普通の足袋が暑苦しいと思うのなら、レースにすればいいって。
そうか、その手があったのか。

私の浴衣も選び終わり、炯さんの浴衣選びに入ったものの。

「これでいい」

いくつかの反物から、適当に炯さんが選ぶ。

「あの。
もっと真剣に……」

いくら紳士物は女性に比べて選べる幅が少ないからといって、雑すぎない?
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