私にワルイコトを教えたのは政略結婚の旦那様でした
「別に適当じゃないぞ?
この色なら並んだときに、凛音の浴衣が映えるだろ?」

得意げに、にやりと右頬を歪めて炯さんが笑う。
一応、考えてくれてはいるんだ。

「帯はどっちがいいと思う?」

炯さんが差し出してきたのは、黒と白の帯だった。
浴衣が焦げ茶なら、帯は黒かな……?
それに。

「黒がいいです。
帯が同じ色って、ちょっとだけペアルックっぽくないですか?」

自分で言っておきながら、なかったかなとは思ったけれど。

「そうだな」

眼鏡の下で目尻を下げ、彼の顔が近づいてくる。
しかし、唇が触れたのは私の手のひらだった。

「人前でキス禁止だって言ったはずです」

「そうだった」

笑いながら彼が、少し油断していた隙に額へ口付けを落としてくる。
それにしょうがないなと私も笑っていた。



その日はようやく、ドレス選びに来ていた。
炯さんが選んだのは一日一組限定のサロンで、ゆっくり見られる。
それにネイルからヘアメイクまでトータルコーディネートしてくれて、当日もお任せなのらしい。

「凛音が気になると言っていたドレスは準備してもらっているから、とりあえず着てきたらいい」

「わかりました」

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