私にワルイコトを教えたのは政略結婚の旦那様でした
その後もドレスを何着か試着した。

「どれも綺麗だから決められないよな……」

悩んでいる炯さんの隣で、ぐったりと疲れてストローを咥える。
なんだか暑くて飲み物はアイスティにしてもらった。
それもそうだよね、とっかえひっかえ、いったい何着のドレスを試着したんだろう?

「でも着るのは、ウェディングドレスとお色直しのカラードレスの二着ですし」

「それだけどな」

グラスをテーブルの上に戻し、炯さんが座り直して私のほうへ身体を向ける。

「式と披露宴を別のドレスにして、さらに前撮りも別にすれば、三着は着られる」

「……は?」

彼は真剣だが、思わず変な声が出た。
そういえば、式を二回挙げようとかも言っていたような……。
どうも私よりも炯さんのほうが、ドレス選びを楽しんでいる気がする。

「本当は全部のドレスを着せたいけどな」

「はぁ……」

そんなの、私の身体がいくつあっても足りないよ……。

ドレスは候補を絞ったところでいったん保留にして、和装の衣装を選ぶ。
お色直しは二回で、最後は和装だ。

「白無垢は絶対だが、色打ち掛けもいいよな」

真剣に炯さんは選んでいるけれど。

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