私にワルイコトを教えたのは政略結婚の旦那様でした
「いいんですか!?」

「ああ」

眼鏡の奥で眩しそうに目を細め、喜ぶ私をコマキさんは見ている。
その顔に、胸がとくんと甘く鼓動した。

「あっ、……じゃあ。
イチゴのクレープと、チョコバナナ、で」

「わかった」

小さく呟くように言った声を拾い、コマキさんが注文してくれる。
どきどき、どきどき。
心臓の鼓動が、速い。

「ほら」

「あ、ありがとう、……ございます」

熱を持つ顔を見られたくなくて、俯いた。
近くにあったベンチにふたり並んで座り、俯いたままちまちまとクレープを囓る。

「クレープの味はどうだ?」

「お、美味しいです」

嘘。
ときめきが止まらなくて、味なんてわからない。
これは私が、男慣れしていないからなんだろうか。

「食べるだろ?」

「えっ、あっ」

少ししたところで、コマキさんがクレープを差し出してきた。
慌てて受け取ろうとしたものの。

「ほら」

彼は渡さずに、それを私の口もとへと近づけてくる。
もしかして、このまま食べろと!?
そんなの、ハードルが高すぎる!

「なに固まってんだ?
ほら、遠慮するな」

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