私にワルイコトを教えたのは政略結婚の旦那様でした
しかし彼にとってこれは当たり前みたいで、引いてくれそうにない。

「じゃ、じゃあ」

諦めて、ゆっくりと口を開けて彼の持つクレープをひとくち食べた。
さっきから、自分の鼓動ばかりが耳につく。

「そっちも食べさせてくれ」

今度はあーんと口を開け、コマキさんが私を待っている。
どうしてこう、彼は私に難しい行為ばかりさせたがるのだろう。
しかし私が食べさせるまでそのままでいそうなので、覚悟を決めてその口に近づけた。

「やっぱ、イチゴもいいな」

「そ、そうですね」

残りのクレープを食べながら気づいた。
もしかしてこれは、ものすごく恋人同士っぽい行動なのでは?私はこんなに恥ずかしくて大変だったけれど、世の恋人たちはこれを平気でやっているなんて尊敬する。
それとも、慣れれば平気になるんだろうか。
しかし、私にはそんな時間はないので、一生理解できそうにない。

「クレープもたまに食べるとうまいな」

クレープも食べ終わり、ベンチを立つ。

「たまに……?」

彼の口ぶりからいって、嫌になるほど前に食べたって感じだが、そんなに食べるものなの?
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