私にワルイコトを教えたのは政略結婚の旦那様でした
教授の機嫌を損ねたら自分の立場が危うくなりかねない。

仕方ないので仕事に戻る。
ベーデガー教授に会いたくなくて、進んで本を戻していく作業をした。

「城坂さん、お昼いこー」

「あっ、はーい!」

無心に作業をしていたら、いつの間にかお昼になっていた。
今日も島西さんと一緒にカフェテリアへ向かう。

「なに食べるー?」

「そうですね……」

上司の反応があれだったからか、今日はあまり食欲がない。
少し考えて、サンドイッチとスープのセットにした。

「結婚式にあわせてダイエット?」

私のトレイの上を見て島西さんが意地悪く笑う。

「まあ、そうですね」

私もそれに笑ってあわせておいた。

「結婚式の準備はどうよ?」

「まあ、ぼちぼちです」

近々、母たちと二度目のドレス選びに行く手はずになっている。
それで決まればいいのだけれど。

「……結婚式といえばです、ね」

「……うん」

私の声が控えめになり、深刻そうになったからか、彼女は一度、お箸を置いた。

「ベーデガー教授から無理矢理キスされまし、て」

「……は?」

その瞬間、真円を描くほど彼女の目が大きく見開かれる。

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