私にワルイコトを教えたのは政略結婚の旦那様でした
「え、ちょっと待って。
嫌がる城坂さんに無理矢理、キスしてきたの?」

少し慌てた様子で、島西さんが聞いてくる。

「あー……。
不意打ちだったので、嫌がったりはしてないといえばしてなかったんですケド」

「それでも同意なしのキスはない。
サイテー!」

ぐさっと勢いよく、怒りをぶつけるように彼女は白身フライにお箸を突き立てた。

「え、でも、島西さん、前にベーデガー教授が私にちょっかい出すの、面白がってましたよね?」

「それはそれ、これはこれ。
多少、城坂さんが困ってるのを見るの、面白いじゃない?」

「はぁ……」

そんなので、面白がらないでいただきたい。
私としては迷惑だ。

「それに恋に一生懸命な人って、応援してあげたくなるじゃない?
もしかしたらそのうち、城坂さんがよろめく可能性もなくはないわけだし」

応援してあげたくなる気持ちはわかる、かも。
しかし、私が炯さん以外の人によろめく可能性なんて皆無だが。

「でも!」

顔を上げると同時に、島西さんが軽く両の拳でテーブルを叩く。

「同意もなしにキスとか絶対にダメ!
相手の嫌がる行為、絶対禁止!」

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