私にワルイコトを教えたのは政略結婚の旦那様でした
そう願うものの、ドアがちょうど目隠しになり、私の姿は彼らには見えなかった。

「止メ方ガワカラナカッタンデスガ、説明書ガ出テキタノデ、スグニ止メマス。
本当ニスミマセン」

「わかりました、よろしくお願いしますよ」

教授の説明で納得したのか、ドアが閉まる。
足音が遠ざかると同時に彼は携帯を床に落とした。
ガツッ、と勢いよく革靴の踵が携帯に叩き込まれ、音が静かになる。

『ほんとに、うるさいったらありゃしない』

はぁっと面倒臭そうにため息をつき、彼は私の前にしゃがみ込んだ。

『あんなものを持たされているなんて、可哀想だね』

彼の手が私を顎にかかり、無理矢理、眼鏡越しに目をあわせさせる。
どこか愉しそうな碧い瞳を、怯えて見ていた。

『やっぱり、僕のところへおいでよ。
僕なら……』

「凛音様、いらっしゃいますか!」

外から声をかけられると同時に、ベーデガー教授の背後で――ドアが、吹っ飛んだ。

『……え?』

これにはさすがに、彼も固まっている。

「……キサマ、凛音様になにをしている?」

「あっ!」

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