私にワルイコトを教えたのは政略結婚の旦那様でした
わけがわからなくて炯さんの顔を見上げる。

「凛音の危険を察知して、俺たちに通知が行くって言っただろ?」

私の左手首を持ち上げ、そこに嵌まる腕時計に炯さんは口付けを落とした。
確かにこの腕時計をもらったときに、言われた。

「凛音の携帯から警報も鳴るようになってるんだ。
こっちから操作しない限り、止まらない」

そうだったんだ。
だから、ベーデガー教授は止められずに携帯を壊した。

「それに今日は、ミドリを近くに待機させていたからな」

「……は?」

さすがにそれには、変な声が出た。
言われれば警報が鳴り出してからミドリさんの登場までさほどなかった。
家から大学まであの時間で来るなんて、瞬間移動でもしない限り無理だ。

「またアイツが凛音に手を出してきたら困るだろ?
だからなにかあってもすぐに対応できるように、ミドリを待機させておいた」

「そうなんですね」

「本当は俺が待機していたかったんだがな」

眼鏡の下で眉間に皺を寄せた彼は後悔しているように見えた。
それが嬉しくて、甘えるようにその胸に額を預ける。

「……ちょっと大騒ぎ、しすぎちゃいましたかね」

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