私にワルイコトを教えたのは政略結婚の旦那様でした
苦笑いで彼が、私に硬化を握らせてくれる。
きっと私も、数度で取れると思っていたものの……。

「ぜんっ、ぜん、取れない……」

もうチャレンジは十度目を超えたが、ぬいぐるみは最初の場所からほとんど動いていない。
持ち上がればいいほう、酷いとクレーンが上がり始めた時点でするりと爪が外れる。

「もう諦めるか?」

「絶対、諦めません!」

ぬいぐるみを見つめたままお金を寄越せと手を出すと、すぐに彼が硬貨を乗せてくれた。

「茜って意外と、諦めが悪いのな」

茜って誰?と一瞬思ったが、それが今の私の名前だった。
おかしそうに笑いながら、コマキさんは私がクレーンを操作するのを見ている。
自分だってこんなに、諦めが悪いだなんて知らなかった。
反対に、すぐに諦められるのが私のいいところだと思っていたくらいだ。

「茜。
この脇の下に爪が入るように調整してみろ」

「わかりました」

コマキさんのアドバイスに従い、何度かチャレンジする。
コツもわかってきて、爪を引っかけていい位置になるように調整し、そして。

「取れたー!」

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