私にワルイコトを教えたのは政略結婚の旦那様でした
今日の私にあわせて浴衣姿の彼女は、かなり美人だ。
こんな人と一緒だなんて、反対に声をかけられるんじゃないかと心配になる。

「そこの彼女たちー、誰か待ってるのー?」

一見、爽やか好青年風の男性二人組が声をかけてきた。
杞憂が現実になり、心の中でため息をついた。

「待ち合わせ中ですので、心配はご無用です」

「えー、そんなこと言わないでさー。
その格好、お祭り行くんでしょ?
俺らと行かない?」

素っ気なくミドリさんは断っているというのに、彼らはしつこく絡んでくる。
しかも、手首を掴まれた。

「……いやっ」

「離せ」

反射的に引っ込めたが、手は離れない。
しかし瞬間、ミドリさんがその手を叩き落とした。

「いったー。
あー、これもう、折れちゃったかもなー」

などと言いつつ、男はニヤニヤ笑い、もうひとりに目配せしている。
絶対、折れてなどいない。
ミドリさんだってそれほど、強く叩かなかった。
ああやって私たちが動揺するのを楽しみたいだけなのだ。

「どーすんの、これ?」

男がわざとらしく手首をぶらぶらと振ってみせるが、本当に折れていたら痛くてあんなことはできないはずだ。

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