私にワルイコトを教えたのは政略結婚の旦那様でした
「責任取ってとりあえず、病院付き合ってよ」

また男が強引に私の手を掴み、引っ張ってくる。

「そっちのおねぇさんも、ほら」

「はぁっ」

さらにもうひとりの男がミドリさんを促すが、彼女は短くため息をついただけだった。

「私は別に、かまいませんけどね」

「やっ……」

ミドリさんが誘いに乗ってくれたと思ったのか、男が喜んだのも束の間。
その背後に、大きな黒い影が現れた。

「……なあ」

「ひっ」

ぼそっと低い音が落とされただけで、男たちが悲鳴を上げて縮こまる。

「俺の女をどこに連れていく気だ?」

高圧的に黒い影――炯さんが男たちを見下ろす。

「ス、スミマセンデシタ!」

及び腰で炯さんを見上げていた彼らは次の瞬間、一目散に逃げていった。

「なんだ、あれ」

呆れ気味に炯さんがため息を落とす。
彼らにはもしかしたら、炯さんがクマか化け物にでも見えていたのかもしれない。

「待ち合わせは問題だな、凛音が必ずナンパされている」

「は、はははは……」

私が悪いわけではないが、それでも気まずくて目を逸らしてしまう。
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