私にワルイコトを教えたのは政略結婚の旦那様でした
「ミドリもお疲れな。
これでうまいもんでも食べて帰ってくれ」

炯さんはミドリさんの手を取り、一万円札を握らせた。

「そんな!
私はこれが仕事ですので」

ミドリさんは返そうとしてきたが、それを炯さんが押しとどめる。

「いいから。
さっきのあれはミドリも不快だっただろ?
迷惑料だ、受け取っとけ」

「……ありがとうございます」

それで返す気はなくなったのか、ミドリさんはそれを受け取った。
炯さんは凄いな、ちゃんとミドリさんも気遣って。
私も見習わなきゃ。

「お気をつけていってらっしゃいませ」

「ミドリもありがとな」

「ありがとうございました」

お礼を言ってミドリさんと別れ、神社へと向かう。

「浴衣、似合ってるな」

私を見下ろし、小さくふふっと炯さんが笑う。

「ありがとうございます」

嬉しくて頬が熱くなっていく。

「凄く艶っぽくて今すぐ押し倒したいが……帰るまでの我慢だな」

「えっ、あっ」

ちゅっと露わになっているうなじへと口付けが落とされ、思わずそこを押さえていた。
うーっ、こんなの反則だよ……。

「け、炯さんの浴衣姿も素敵です」

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