私にワルイコトを教えたのは政略結婚の旦那様でした
自分だけどきどきさせられるのもしゃくなので、反撃を試みる。
実際、炯さんの浴衣姿はとても色っぽくて、心臓の高鳴りが止まらない。

「そうか?」

あっさりと言った彼の顔が近づいてくる。

「……なあ。
欲情、してくれてる?」

その指摘で心臓が大きく跳ねた。
どうして炯さんは気づいてしまうんだろう。
うなじに口付けを落とされたときから、じんわりとそこが湿っているのに気づいていた。

「このまま……帰ろうか」

妖艶に光る瞳が、レンズの向こうから見ている。
とろりと蜜が、流れ落ちるのを感じた。

「あ……ダメですよ」

さりげなくその胸を押して、身体を離す。

「屋台、すっごく楽しみにしてきたんですから。
花火だって見たいです!」

火照り、すっかり欲情している顔を知られたくなくて、俯いたまま捲したてた。

「そうか。
残念」

顔を上げると、彼がにやりと口端を持ち上げるのが見えた。
炯さん、狡い。
いつも私は彼に、いいように弄ばれっぱなしだ。

参道には多くの屋台が並んでいた。

「たこ焼き!
焼きそば!
リンゴ飴も食べたいです!」

「はいはい」

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