私にワルイコトを教えたのは政略結婚の旦那様でした
「金魚掬いも、ヨーヨー釣りもやりたいです!」

「はいはい。
でも、先に挨拶な」

はしゃぐ私に苦笑いし、炯さんは私の手を引いて人混みを進んでいく。
……ちょっと子供っぽかったかな。
ちらりと彼を見上げたら、目があった。

「祭りなんていくつになってもはしゃぐもんだからな。
ほら」

炯さんが視線を向けた先では、サラリーマン数人がなにやら子供みたいに大騒ぎしていた。
もしかして、フォローしてくれた?
でも、はしゃいでいいんだってちょっと楽になった。

「こんばんは、灰谷の若旦那!」

出店の一番端、神社のすぐ隣にあるテントで、炯さんを見つけた初老の男性から声をかけられた。

「若旦那はよしてくださいよ」

笑いながら炯さんは中へと入っていく。
勧められて、ふたり並んでパイプ椅子に座った。
簡易事務所の中では先ほどの男性を中心に四、五人が談笑していた。

「今年も若旦那のおかげで、無事に祭りがおこなえています」

「いえいえ。
皆様の尽力のおかげです」

にっこりと炯さんが笑う。
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