私にワルイコトを教えたのは政略結婚の旦那様でした
もし好みから激しく違う男性だったらお見合いなんて逃げ出したくなっちゃうかもしれないし、だったら相手の顔なんて知らないほうがいい。
もっとも、気が重くて時間になるまで、外で空気を吸わせてもらっている状態だが。
「おい。
その池に飛び込んでも、死ねないと思うぞ」
「……は?」
唐突に男の声が聞こえ、そちらを見る。
そこには上部が太いメタルハーフリム眼鏡の下で眉を寄せた、スーツ姿の若い男性が立っていた。
「えっと……。
さすがに、この池に飛び込もうなんて思いませんが」
戸惑いながら彼に答える。
しかし、そう心配されるほど自分が思い悩んだ顔をしていた自覚があった。
「そうか。
なら、いいが」
彼の手がゆっくりと上がり、その行方を追う。
それは私の頭を、軽くぽんぽんと叩いた。
「あの……」
「ああ、すまん」
私の声で自分の行為に気づいたのか、彼は確かめるように軽くその手を見たあと、引っ込めた。
「俺にはちょうど、君くらいの妹がいてな。
それで、つい」
「はぁ……」
照れくさそうに彼は人差し指でぽりぽりと頬を掻いている。
それはよき兄なんだろうなと想像させた。
もっとも、気が重くて時間になるまで、外で空気を吸わせてもらっている状態だが。
「おい。
その池に飛び込んでも、死ねないと思うぞ」
「……は?」
唐突に男の声が聞こえ、そちらを見る。
そこには上部が太いメタルハーフリム眼鏡の下で眉を寄せた、スーツ姿の若い男性が立っていた。
「えっと……。
さすがに、この池に飛び込もうなんて思いませんが」
戸惑いながら彼に答える。
しかし、そう心配されるほど自分が思い悩んだ顔をしていた自覚があった。
「そうか。
なら、いいが」
彼の手がゆっくりと上がり、その行方を追う。
それは私の頭を、軽くぽんぽんと叩いた。
「あの……」
「ああ、すまん」
私の声で自分の行為に気づいたのか、彼は確かめるように軽くその手を見たあと、引っ込めた。
「俺にはちょうど、君くらいの妹がいてな。
それで、つい」
「はぁ……」
照れくさそうに彼は人差し指でぽりぽりと頬を掻いている。
それはよき兄なんだろうなと想像させた。