私にワルイコトを教えたのは政略結婚の旦那様でした
ようやく自分の手にウサギのぬいぐるみを抱き、これ以上ないほど興奮した。

「よかったな!」

コマキさんも自分で取ったかのように喜び、私の髪をガシガシ撫で回してくる。
それが、酷く嬉しかった。

右側にウサギのぬいぐるみ、左側にポテチの巨大な袋を抱えてゲームセンターを出る。
外はもう、日が暮れていた。

「満足したか?」

「はい、もう!」

こんなに楽しいのは初めてだ。
弁論大会で賞をもらったときですら、これほど興奮はしなかった。

「じゃあ、そろそろ帰るか」

「え……」

その言葉に気分はみるみる失速していく。
楽しくて忘れていた、今日は見合いを抜け出して遊びに出たのだ。
私はまたあそこに戻り、あの生活に戻るしかない。
それ以外の選択ができるのはもうわかっていたが、私は両親に迷惑をかけたくないのだ。
それに私の結婚は父の会社の今後に左右し、多くの人たちの今後に影響する。
だから私は、黙って父に従うしかないのだ。

「……そう、ですね」

それでもまだ、帰りたくない。
外の楽しさを知ってしまい、あの籠の中に帰るのが苦しくなっていた。
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