私にワルイコトを教えたのは政略結婚の旦那様でした
「はい!
まずは軽く腹ごしらえです!」

ぐいぐい手を引っ張る私に苦笑いで炯さんは着いてきていたが、気にならない。
すぐに見えてきたたこ焼きの屋台で、早速足を止めた。

「ひとつください」

すぐ後ろでごそごそ支払いの準備を始めた炯さんを止める。

「全然、大丈夫なので」

ここしばらくのアルバイトのおかげで、かなりお金が貯まっている。
それにこういうところでは現金払いがまだ多いって聞いていたので、しっかり小銭を用意してきた。

「ばーか。
このあいだのお詫びに、屋台で豪遊させてやる約束だろ」

にやりと笑い、彼が軽く指先で私の額を小突く。

「……ソウデシタ」

少し気まずく、そろそろと出しかけた財布をしまった。

「それで?
あとはなにを買うんだ?」

「あとは……」

焼きそばも食べたい。
肉巻きおにぎりとか焼きイカも気になる。
でも、リンゴ飴は絶対だし、かき氷もクロワッサン鯛焼きも惹かれるんだよね……。

「うーっ」

「そう悩むな。
食べきれない分は俺が食べてやる。
持って帰って明日食べてもいいしな」

軽く彼が私の頭をぽんぽんしてくる。
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