私にワルイコトを教えたのは政略結婚の旦那様でした
幸い、時計のGPSは生きていて、人波をかき分けてそこへと向かう。
動いていない、そこにいるはずだ。
無事でいてくれ……!
しかしたどり着いたそこには凛音の姿はなく、壊れた携帯と腕時計が転がっているだけだった。

「スミ。
凛音が攫われた」

この状況、どう考えても祭りに夢中になって、はぐれたことに気づいていないわけではない。
足を、自宅の方向へと向ける。

『わかりました。
ミドリさんにも連絡して、すぐご自宅へ向かいます』

「頼む」

そのまま、家までの道を駆け抜けた。
俺の背後で、花火が上がる。
今頃、凛音と美しいあの花を愛でているはずだった。
なのに、なんでこうなった?
そんなの、俺が彼女の手を離したからに他ならない。

「坊ちゃん!」

「スミ!」

家ではすでに、スミとミドリが待っていた。

「凛音様のかんざしにGPSを仕込んであります。
スミに抜かりはございません」

スミがタブレットの画面を見せてくる。
そこでは地図の上を赤い点が移動していた。
あれが、凛音の居場所なんだろう。

「でかした」

赤い点はどんどん移動していっている。
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