私にワルイコトを教えたのは政略結婚の旦那様でした
早く追いかけなければ逃げられてしまう。

「いってくる!」

「坊ちゃん、お待ちを」

「なんだ!?」

俺を止めるスミを、苛立ちと怒りで見下ろした。

「飲酒運転は御法度でございます。
ミドリさんに運転を」

「あ、ああ。
そうだな」

冷静なスミの指摘で、少しだけ落ち着きを取り戻す。
途中で俺が捕まったら、元も子もない。

「じゃあ、いってくる」

「おふたりの無事のお帰りを、お待ちしております」

スミに見送られ、家を出た。
しかし、凛音を攫ったのは誰だ?
携帯は警報を鳴らす前に壊されていた。
警報が鳴るのを知っているのは……。

「……アイツか」

身内と警備会社の人間以外で、知っているのはアイツしか考えられない。
前に凛音を襲ったとき、警報が鳴ったからもう学習しているはずだ。

どうして俺は、ずっと凛音と手を繋いでおかなかったんだろう?
子供じゃないんだからといわれればそれまでだが、凛音には危険を冒してでも手に入れる〝価値〟があるのだ。
アッシュのご令嬢として。
三ツ星の次期奥様として。
そして――俺の婚約者として。

「無事でいてくれ……!」

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