私にワルイコトを教えたのは政略結婚の旦那様でした
戻ればもう、今日のような自由は二度とないのだろう。
だったら、最後に。
「……でも、まだやり残したことがあります」
コマキさんの腕を掴み、彼を見上げる。
「まだ、素敵な殿方との恋をしていません」
レンズ越しにじっと私を見下ろしている彼が、なにを考えているかなんてわからない。
それでも先を続ける。
「……抱いて、ください」
私の声は酷く小さいうえに、震えていた。
眼鏡の向こうで迷うように、彼の瞳が数度揺れた。
「俺で、いいのか」
「はい」
その顔を見るのは怖くて、彼の胸に顔をうずめる。
ポテチとぬいぐるみの落ちる音がした。
移動中の車の中、コマキさんはずっと無言だった。
私もなにも言えずに、ぎゅっとぬいぐるみを抱き締める。
彼は外資の、高級ホテルのスイートで私を押し倒した。
「本当にいいんだな」
艶やかに光る目が、私を見ている。
その瞳に、心臓がどくん、どくんと大きく鼓動した。
「はい。
私はコマキさんが好き、なので」
キスを誘うように目を閉じる。
この気持ちは偽りではない。
彼が、好きだ。
ただし、まだほのかに好意を抱いている、くらいだが。
だったら、最後に。
「……でも、まだやり残したことがあります」
コマキさんの腕を掴み、彼を見上げる。
「まだ、素敵な殿方との恋をしていません」
レンズ越しにじっと私を見下ろしている彼が、なにを考えているかなんてわからない。
それでも先を続ける。
「……抱いて、ください」
私の声は酷く小さいうえに、震えていた。
眼鏡の向こうで迷うように、彼の瞳が数度揺れた。
「俺で、いいのか」
「はい」
その顔を見るのは怖くて、彼の胸に顔をうずめる。
ポテチとぬいぐるみの落ちる音がした。
移動中の車の中、コマキさんはずっと無言だった。
私もなにも言えずに、ぎゅっとぬいぐるみを抱き締める。
彼は外資の、高級ホテルのスイートで私を押し倒した。
「本当にいいんだな」
艶やかに光る目が、私を見ている。
その瞳に、心臓がどくん、どくんと大きく鼓動した。
「はい。
私はコマキさんが好き、なので」
キスを誘うように目を閉じる。
この気持ちは偽りではない。
彼が、好きだ。
ただし、まだほのかに好意を抱いている、くらいだが。