私にワルイコトを教えたのは政略結婚の旦那様でした
あっという間に彼が、私の希望をへし折ってしまう。
……じゃあ、私はもう二度と、炯さんに会えない?

『いいね。
その、絶望に染まった顔』

口角をつり上げ、教授はにっこりと笑った。

彼が部屋に置いてあるマシンを操作し、コーヒーのにおいが漂い出す。
少ししてカップを手に、教授は先ほどの椅子に座った。

『凛音もどうだい?
って、それじゃ飲めないか』

おかしくもないのに彼がくすくすと笑う。

『解いてほしい?』

それにはうんうんと勢いよく頷いた。
窓から見える風景は先ほどから変わっていない。
まだ出港していないはずだ。
今ならなんとか、逃げられるかもしれない。

『嫌だよー。
だって、騒がれるとうるさいからね』

すました顔で教授はコーヒーを飲んでいて、本当に忌ま忌ましい。

『さて』

飲み終わったカップを近くの棚に置き、彼は座り直した。

『凛音の聞きたいことはだいたいわかるよ。
なんで僕がここまで、君に拘るのかってことだよね』

いや、それはだいたいわかる。
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