私にワルイコトを教えたのは政略結婚の旦那様でした

まるで私の疑問に答えるように彼が教えてくれる。
しかしその笑顔は酷く作りものめいていて、背筋がぞくりとした。

『大和撫子は海外で人気が高いんだ。
僕はクライアントの希望にあう子を探すのが役目なんだ。
それには大学教授っていうのはちょうどよくてね』

淡々と彼は語っているが、もしかして行方不明になったまま、まだ見つかっていない桜子さんも彼の仕業なのでは。
そんな疑念が浮かんでくる。

『あそこの大学は論文の盗用の常習犯でね。
脅したら簡単に採用してくれたよ』

くつくつとおかしそうに彼が笑う。
それでもしかしたら職員たちは、彼の顔色をうかがっていたのかもしれない。

この期におよんでまだ逃げる隙をうかがうが、まるで見張るようにベーデガーは私の前から動かない。
なにが楽しいのか彼は、ずっとにこにこ笑っていた。

『そろそろ出港の時間かな』

船の、警笛の音がする。
出てしまえばもう、本当に炯さんに会えなくなる。
それだけでもつらいのに。

椅子を立ってきたベーデガーが、私にのしかかる。

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