私にワルイコトを教えたのは政略結婚の旦那様でした
確かに浴衣も髪もかなり乱れているし、かなりの大乱闘があったんだろうなというのは推測できた。
しかし、人身売買の密航船だ、それに兵隊と言っていたから、普通じゃなく屈強な人たちがいたはずなのだ。
それを〝のした〟のひとことで片付けられる炯さんって?
え?
え?

「伊達に海賊と渡りあってないからな。
海賊に比べれば、弱かったぞ?」

わざとらしく声を上げて彼は高らかと笑っている。
もう、考えるのはよそう……。

ぺたんと座り込んで完全に戦意を喪失しているベーデガーを、私を縛っていた縄で炯さんが縛る。

「他にも女の子が攫われてきているかもしれなくて……」

ベーデガーのあの口ぶりだと、もう何人かこの船に乗っていそうだ。

「もうミドリが助けに行ってるから心配しなくていい」

安心させるように炯さんが私の頭をぽんぽんした。
それで大丈夫だって思えるのはなんでだろう?

「じゃあ、かえ……」

「炯さん」

私を抱き抱えようとした彼を止める。
そのまま視線でベーデガーを指した。
炯さんは小さくため息をつき、その前に私を支えて立たせてくれた。
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