私にワルイコトを教えたのは政略結婚の旦那様でした
『ベーデガーさん。
私はあなたのいうような大和撫子じゃありません。
それに、あなたにとって女の子はただの商品かもしれませんが、立派な意志を持った人間なんです。
意志を持った!
人間!
人をそんなふうに扱っていると、そのうち自分に返ってきますよ』

思いっきり冷めた目で彼を見下ろす。

『別に僕だけが悪いわけじゃないだろ。
買うヤツがいるから、斡旋しただけだ。
それに、僕が捕まったところで、すぐに別のヤツが出てくる』

微塵も反省せずにそんなことを言う彼にカッと腹の底に火がつき、反射的に手が上がる。

「やめておけ」

しかし、それは振り下ろす前に炯さんに止められた。

「こんなヤツ、凛音が手を下す価値もない」

「でも、でも……!」

こんな人、絶対に許せない。
人を食い物にしておいて、自分は悪くないなんて。

『はっ、甘ちゃんが』

「……あ?」

炯さんの目がすーっと細くなり、拳が握られた腕が後ろに引かれるのが見えた。

『そんなんだから僕に』

拳が、ベーデガーの顔へと勢いよく向かっていく。
私を止めておいて、炯さんは殴るの!?

『攫われ……』

そこでベーデガーがおしゃべりを止めた。
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