私にワルイコトを教えたのは政略結婚の旦那様でした
彼の眼鏡すれすれのところで、炯さんの拳が止まっている。
「蚊がいた」
『へっ?』
おそるおそる見上げたベーデガーを、炯さんが冷ややかな目で見下ろす。
次の瞬間、ベーデガーは白目を剥いて後ろ向きに倒れた。
「じゃあ、帰るか」
まるで遊びから帰るかのごとく炯さんが声をかけてくれる。
「そうですね」
おかげで少し、気が楽になった。
出された手に自分の手をのせ、一歩踏み出そうとしたが。
「あっ」
「おっと」
倒れそうになった私を、炯さんが支えてくれる。
「仕方ないな」
「あっ」
軽々とお姫様抱っこされ、その肩に掴まった。
「炯さん。
助けに来てくださって、ありがとうございます」
「当たり前だろ。
俺のほうこそ、危険な目に遭わせてすまない」
あやすように彼がキスしてくれる。
港には多数のパトカーが到着し、大騒ぎになっていた。
停めてあった車に炯さんが私を乗せてくれる。
すでに運転席にはミドリさんが待機していた。
「今日は疲れただろ。
近くのホテルに……」
「……おうちに、帰る」
炯さんの袖を摘まみ、呟くように言う。
「凛音?」
「おうちに、帰りたい」
「蚊がいた」
『へっ?』
おそるおそる見上げたベーデガーを、炯さんが冷ややかな目で見下ろす。
次の瞬間、ベーデガーは白目を剥いて後ろ向きに倒れた。
「じゃあ、帰るか」
まるで遊びから帰るかのごとく炯さんが声をかけてくれる。
「そうですね」
おかげで少し、気が楽になった。
出された手に自分の手をのせ、一歩踏み出そうとしたが。
「あっ」
「おっと」
倒れそうになった私を、炯さんが支えてくれる。
「仕方ないな」
「あっ」
軽々とお姫様抱っこされ、その肩に掴まった。
「炯さん。
助けに来てくださって、ありがとうございます」
「当たり前だろ。
俺のほうこそ、危険な目に遭わせてすまない」
あやすように彼がキスしてくれる。
港には多数のパトカーが到着し、大騒ぎになっていた。
停めてあった車に炯さんが私を乗せてくれる。
すでに運転席にはミドリさんが待機していた。
「今日は疲れただろ。
近くのホテルに……」
「……おうちに、帰る」
炯さんの袖を摘まみ、呟くように言う。
「凛音?」
「おうちに、帰りたい」