私にワルイコトを教えたのは政略結婚の旦那様でした
炯さんの顔をじっと見上げる。
今はただ早く、炯さんと暮らす慣れ親しんだあの家に帰りたかった。
「わかった」
私の頭を軽くぽんぽんし、炯さんは家に向かうようにミドリさんへ指示を出した。
炯さんの肩に軽く寄りかかる。
彼の手が、強く私の肩を抱いてくれた。
彼の匂いが、ぬくもりが、私を安心させる。
「もう、安心していい」
「……はい」
証明するかのように、炯さんの手に力が入った。
私はちゃんと、炯さんと一緒にいる。
それで安心したのか、意識を失った。
*****
「連れて帰ってきた」
「おかえりなさいませ……!」
帰ってきた俺たちを見て、出迎えたスミは目に涙を浮かべた。
意識のない凛音をベッドへ寝かせ、スミが呼んでいた医者に診てもらう。
手首と足首は縄が擦れたのか血が滲んでいて、痛々しい。
しかもきつく猿轡を噛まされていたせいか、唇の端も切れていた。
詳しい結果はまだあとだが、とりあえずはなにか薬を使われていた形跡はなさそうで、ほっとした。
スミたちに感謝を伝えて帰し、軽くシャワーを浴びて寝室へ戻る。
「うーっ、ううーっ」
「凛音?」