私にワルイコトを教えたのは政略結婚の旦那様でした
凛音の親も彼女の自由を制限していたのは、その理由もあったのだと理解している。
それでも俺は、彼女を外へ出してやりたかったのだ。

あの日、俺の隣でキラキラ目を輝かせて遊んでいる凛音が、不憫になるのと同時に堪らなく愛おしくなった。
さらに、素敵な殿方と恋をしたいので抱いてくれと俺に頼んでくるほど、度胸もある。

……この可愛い女を俺のものにしたい。

俺のものにして、本気で恋に堕としたい。
それは俺が、初めて抱く感情だった。

今まで人並みに女性と付き合ったことはあるが、凛音にここまで本気になるとあれは本当に恋だったのか疑わしい。
凛音のことになると、まるで高校生のガキのように余裕がなくなる。
そのせいで失態を犯し、凛音を怯えさせてしまった。
しかも六つも年下の彼女に大人の対応で気遣われてしまい……あれは本当に、最低だった。
あれ以来、できるだけ抑えるように努力はしている。
上手くいっているかどうかは、わからないが。

「……ん」

「どうした?」

小さく身動ぎした彼女の顔をのぞき込むと、目尻に涙が光っていた。
指先でそっと、それを拭ってやる。
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