私にワルイコトを教えたのは政略結婚の旦那様でした
トイレを出たら、炯さんが壁に寄りかかって待っていた。
「えっと……」
もしかしてそんなに切羽詰まっていたんだろうか。
しかし、この家にはトイレが二カ所ある。
「大丈夫か?
どこか痛いとかないか?」
過剰なくらい彼は心配してくるが、昨日の今日ならそうなるか。
「大丈夫ですよ」
手首と足首は痛むが、平気だと笑顔を作る。
これ以上、彼を心配させたくない。
「食欲はあるか」
「そうですね……」
あると答えたいが、まったく食べたいという気が起こらなかった。
炯さんと一緒にこの家に帰ってきて落ち着いたと思っていたが、心のダメージはそう簡単にはいかないらしい。
「……すみません、ないです」
情けなく笑って顔を見ると、みるみる彼の表情が曇っていった。
「凛音が謝る必要ないだろ。
ベッドで待ってろ、なんか飲むもの持ってくる」
「……はい」
僅かな距離なのに炯さんは私をベッドにまで送り届け、寝室を出ていった。
「うーっ」
こんなに炯さんに心配をかけている自分が情けない。
昨日だって、初めてのお祭りではしゃいで私がはぐれたのが、そもそも悪かったんだし。
「凛音」
「えっと……」
もしかしてそんなに切羽詰まっていたんだろうか。
しかし、この家にはトイレが二カ所ある。
「大丈夫か?
どこか痛いとかないか?」
過剰なくらい彼は心配してくるが、昨日の今日ならそうなるか。
「大丈夫ですよ」
手首と足首は痛むが、平気だと笑顔を作る。
これ以上、彼を心配させたくない。
「食欲はあるか」
「そうですね……」
あると答えたいが、まったく食べたいという気が起こらなかった。
炯さんと一緒にこの家に帰ってきて落ち着いたと思っていたが、心のダメージはそう簡単にはいかないらしい。
「……すみません、ないです」
情けなく笑って顔を見ると、みるみる彼の表情が曇っていった。
「凛音が謝る必要ないだろ。
ベッドで待ってろ、なんか飲むもの持ってくる」
「……はい」
僅かな距離なのに炯さんは私をベッドにまで送り届け、寝室を出ていった。
「うーっ」
こんなに炯さんに心配をかけている自分が情けない。
昨日だって、初めてのお祭りではしゃいで私がはぐれたのが、そもそも悪かったんだし。
「凛音」