私にワルイコトを教えたのは政略結婚の旦那様でした
少しして炯さんは大きめのグラスを手に戻ってきた。

「これなら飲めるか?」

「ありがとうございます」

受け取ったグラスの中からは、甘い桃の香りがしている。
桃のスムージーなのかな。

ストローを咥えてひとくち。
桃とヨーグルトなのか、甘酸っぱい味が私を元気にしてくれる。
ふと見ると炯さんが、じっと私を見ていた。

「炯さん?」

「あ、いや。
飲めたんならよかった」

慌てて笑って取り繕ってきたが、なんだったんだろう?

「炯さんは朝食、食べないんですか?」

「あ、俺か?
俺はそれ作りながら、端を摘まんだからいい」

などと彼は笑っているが、それは反対に心配です……。

スムージーを飲んだあと、炯さんもベッドに上がって私を抱き締めてくれた。
まだダメージの抜けきらない私としてはありがたいけれど、いいのかな。

「炯さん。
お仕事はいいんですか?」

別に、仕事に行けと催促しているわけではない。
それよりも今は、こうして一緒にいてほしい。
しかし、ワーカーホリック気味な彼が、休みでもないのに家に居るのは気になる。

「しばらく休みにした。
凛音もそのほうがいいだろ」

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