私にワルイコトを教えたのは政略結婚の旦那様でした
でもこれは、そうするのがいいのだ。

炯さんは私を子供のように膝の上に抱き上げて、ずっと髪を撫でている。
それが酷く落ち着いて、意識がとろとろと溶けていった。

「……なあ、凛音」

「……はい」

「婚約、破棄しようか」

「はいーっ?」

さらりと爆弾発言され、さすがに目が覚めた。

「なに、言ってるんですか?」

炯さんは本気で言っているんだろうか。
信じられなくて彼の顔を見る。
彼は私に視線は向けていたが、私ではなくどこか遠くを見ていた。

「俺といればまた、凛音を危険な目に遭わせる。
それでなくても昨日、怖い思いをさせた。
俺よりももっと、凛音を幸せにしてくれるヤツと……」

「なにを言ってるんですか!」

炯さんの顔を両手で挟み、思いっきりパチンと叩く。

「私に悪い遊びをたくさん教えてくださるんでしょう?
私はまだまだ、遊び足りないですよ。
炯さんじゃなきゃ、誰が教えてくれるんですか」

「そう……だな」

あっけに取られている彼に、さらに捲したてる。

「それとも炯さんにとって私は、そんなに簡単に手放せる存在なんですか」

「それ、は……」

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