私にワルイコトを教えたのは政略結婚の旦那様でした
彼を抱き締め、いつも私にしてくれるみたいに背中をとんとんと叩く。

「炯さんが絶対に守ってくれるんなら、少しくらい危険な目に遭ったって大丈夫です。
炯さんは絶対に私を守ってくれるんだから、絶対にピンチにまにあうんです。
だから、絶対に大丈夫です」

自分にも言い聞かせるように〝絶対に大丈夫〟と繰り返した。
私はもしこの先、また危険な目に遭って、今度こそ炯さんと会えなくなっても――今度こそ殺されたって、その気持ちがあれば十分だよ。
それにたとえどんな危険が待っていたとしても、炯さん以外の人となんて一緒の人生を歩んでいけない。
私の気持ち、届け……!

「……そうだな」

そっと炯さんの手が、私の頬に触れる。
レンズの向こうの瞳は、濡れて光っていた。

「なにがあっても俺が絶対に凛音を守る。
だから、安心していい」

泣き出しそうに彼が笑う。

「はい」

たぶん、私も同じ顔をして笑っているんだろうな。

「凛音……」

少し掠れた、甘い声で呼ばれ、キスを誘うように目を閉じた。
まもなく、彼の唇が重なる。
顎を押した親指に口を開かれ、彼の口腔へと誘い込まれた。

「ん、んん……」

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