私にワルイコトを教えたのは政略結婚の旦那様でした
最終章 ワルイコトは終わらない
「パパー、早くー!」
「こらっ、ひとりで行くなと何度言ったらわかるんだ!」
駆けていこうとした女の子の襟首を炯さんは捕まえた。
「だって待ちきれないんだもん」
初めてのキャンプ、唇を尖らせている女の子の気持ちは理解できる。
あれから、私たちは無事に夫婦となった。
あのとき授かった娘、璃奈ももう五つになる。
義父が引退したのもあり、炯さんは子会社の社長から三ツ星造船の社長へと変わった。
これで私たちの危険が減ると喜んでいて不思議だったが、海運業の仕事柄、海賊にその身を狙われていたらしい。
「凛音、頼む」
「はーい」
猫の子よろしく炯さんから差し出された璃奈を受け取った。
「璃奈の気持ちはわかるけど。
ひとりになっちゃ、ダメ。
怖い思いはしたくないでしょ?」
璃奈を膝の上に抱き上げ、目をあわせる。
「したくないけど……」
完全に璃奈はふてくされているが、仕方ないか。
いくら言い含めようと、実際にその〝怖い思い〟がどんなものか、体験しないとわからないもんね。
でも、そんな体験は娘には絶対にさせたくない。
「こらっ、ひとりで行くなと何度言ったらわかるんだ!」
駆けていこうとした女の子の襟首を炯さんは捕まえた。
「だって待ちきれないんだもん」
初めてのキャンプ、唇を尖らせている女の子の気持ちは理解できる。
あれから、私たちは無事に夫婦となった。
あのとき授かった娘、璃奈ももう五つになる。
義父が引退したのもあり、炯さんは子会社の社長から三ツ星造船の社長へと変わった。
これで私たちの危険が減ると喜んでいて不思議だったが、海運業の仕事柄、海賊にその身を狙われていたらしい。
「凛音、頼む」
「はーい」
猫の子よろしく炯さんから差し出された璃奈を受け取った。
「璃奈の気持ちはわかるけど。
ひとりになっちゃ、ダメ。
怖い思いはしたくないでしょ?」
璃奈を膝の上に抱き上げ、目をあわせる。
「したくないけど……」
完全に璃奈はふてくされているが、仕方ないか。
いくら言い含めようと、実際にその〝怖い思い〟がどんなものか、体験しないとわからないもんね。
でも、そんな体験は娘には絶対にさせたくない。