私にワルイコトを教えたのは政略結婚の旦那様でした
過去、私に危害を加えようとした人間は、私設ボディーガードによって瀕死の目に遭わされた。
父から見れば私を誘拐し、犯した男なんて生かしておけるはずがない。

「大丈夫だから心配するな」

私の心配をよそに、コマキさんはガシガシ乱雑に私の髪を撫でてきた。

「ちょっと!」

怒って彼の手を掴んだが、彼は全然気にしていないようだった。

「それより身体、大丈夫か?
昨日はだいぶ、無理をさせてしまったからな」

少しだけ心配そうに彼の眉が寄る。
それで昨晩のあれやこれやを思い出し、一気に顔が熱くなっていった。

「えっ、あっ、……大丈夫、です」

恥ずかしくて、最後のほうは消えていく。

「なら、いいが」

ようやく私がおとなしくなったからか、彼が軽く唇を重ねてくる。
それはまるで好きな人と過ごす翌朝のようで、ますます顔が熱くなっていった。

「とりあえず、大丈夫だからシャワー浴びてこい?
小汚い姿で帰ったら、ますますご両親が心配するだろ?」

「いたっ」

私の額をその長い指で軽く弾き、彼が意地悪く右の口端を持ち上げる。
コマキさんの言うことは確かに、一理あった。
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