私にワルイコトを教えたのは政略結婚の旦那様でした
しかし、大丈夫だと言い切る自信がどこから出てくるのかわからない。

「そうですね……」

「だから、ほら」

これを着ていけとでもいうのか、昨日彼が来ていたシャツを渡してくれる。

「服はあとで持っていってやる」

「わかりました」

渋々ではあるけれど、シャツを羽織って浴室へ向かった。

「服、おいとくなー」

「あ、ありがとうございます」

頭と身体を洗っていたら、ドアの外から声をかけられた。
終わって出ると、昨日着ていた服……ではなく、上品な桜色のワンピースが置いてある。
それしかないのでとりあえず、それを着て出た。

「あの……」

「昨日のあの服で帰ったら、親御さんの怒りレベルが上がるだろ?
少しでも下げてやろうと思って、寝てるあいだに準備しといた」

「ありがとうございます」

なんでもないように彼が言う。
そういう気遣いが嬉しくて、自然と頭を下げていた。

「じゃあ、送っていくな。
それで俺が勝手に連れ出したんだ、茜は悪くないって説明してやるから心配しなくていい」

その気なのか、彼は会ったときのスーツ姿になっていた。
この人はどこまで素敵な人なんだろう。
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