私にワルイコトを教えたのは政略結婚の旦那様でした
なのに彼は、私に自由をくれるというのだろうか。
「時間を無駄にしたくないからな。
だから早く俺の家に移ってきて、一緒に悪いことやろうぜ」
右頬を歪め、実に人の悪い顔で彼が笑う。
でもそれが私には、酷く眩しく見えた。
「は、はい……!」
嬉しくて胸がいっぱいになる。
浮かんできた涙は気づかれないように、さりげなく拭った。
結婚を待たずにすぐにでも越してこいなんてきっと、少しでも早く私をあの窮屈な生活から解放してやろうという彼の心遣いだ。
結婚相手になんの期待もしていなかった。
ただ、暴力を振るう人じゃなかったらいいな、くらいにしか思っていなかった。
でも、私は本当にいい人と結婚するんだな。
雑談を交えながら引っ越しの相談をする。
炯さんは郊外の一軒家に住んでいるが、忙しいときは都心のマンションで過ごしているらしい。
「凛音はどっちに住みたい?
街へのアクセスのよさならマンションだが、こっちは基本、寝に帰るだけだ。
ゆっくりしたい休日などは家に帰るが、少し街から離れているから不便ではある」
「そうですね……」
今だって街まですぐなんて場所に住んでいるわけではない。
「時間を無駄にしたくないからな。
だから早く俺の家に移ってきて、一緒に悪いことやろうぜ」
右頬を歪め、実に人の悪い顔で彼が笑う。
でもそれが私には、酷く眩しく見えた。
「は、はい……!」
嬉しくて胸がいっぱいになる。
浮かんできた涙は気づかれないように、さりげなく拭った。
結婚を待たずにすぐにでも越してこいなんてきっと、少しでも早く私をあの窮屈な生活から解放してやろうという彼の心遣いだ。
結婚相手になんの期待もしていなかった。
ただ、暴力を振るう人じゃなかったらいいな、くらいにしか思っていなかった。
でも、私は本当にいい人と結婚するんだな。
雑談を交えながら引っ越しの相談をする。
炯さんは郊外の一軒家に住んでいるが、忙しいときは都心のマンションで過ごしているらしい。
「凛音はどっちに住みたい?
街へのアクセスのよさならマンションだが、こっちは基本、寝に帰るだけだ。
ゆっくりしたい休日などは家に帰るが、少し街から離れているから不便ではある」
「そうですね……」
今だって街まですぐなんて場所に住んでいるわけではない。