私にワルイコトを教えたのは政略結婚の旦那様でした
それに疲れて帰ってきたら、ひとりになりたいかも?
だったら郊外の家のほうかな。
などと悩んでいたが。

「あ、あと。
俺はあまり家に帰らない。
海外出張が多いんだ。
わるいな」

本当に申し訳なさそうに彼が詫びてくる。
忘れていたわけではないが、彼は海運業会社の社長なのだ。
父の会社の石油運輸も請け負っており、それも彼が結婚相手になる要因にもなった。
海外が仕事の現場となれば、出張が多いのは当たり前だ。

「……そうなんですね」

それでも、これからの彼との楽しいあれやこれやに思いをはせていただけに、落胆を隠しきれない。
悪いとわかってはいたが、落ち込んでしまう。

「そんな顔をするな」

目の前が少し暗くなったかと思ったら、わしゃわしゃと柔らかく髪を撫でられた。

「俺まで悲しくなる」

顔を上げると、炯さんは困ったように笑っていた。
お仕事なのに私はなんてことを。
猛烈に後悔が襲ってくる。

「ごめんなさい」

椅子の上で身を小さく縮こまらせる。
彼だって申し訳なく思っているから、先に断って詫びてくれた。
なのに、不満に思うなんて最低だ。

「だから。
そんな顔するなって」

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