私にワルイコトを教えたのは政略結婚の旦那様でした
完全に困惑した顔で、どうしたらいいのかわからないのか、炯さんは後ろ頭を掻いている。
彼を困らせているのはわかっているが、そうしている自分が情けなくて、ますます落ち込んでいった。

「ほら。
なんか食べて機嫌直せ。
パフェか?
ケーキか?
それとも別の店に行くか?」

スタッフに持ってきてもらったメニューを、彼が私の前に広げる。
……ああ、そうか。
炯さんは私を落ち込ませたと後悔しているんだ。
だったら、私の今の態度はよくない。

「すみません、大丈夫なので」

精一杯、安心させるように彼に笑いかける。
いつまでも浮かない顔をしていたら、炯さんを困らせるだけだ。

「本当か?
なんでも頼んでいいんだぞ?」

それでもまだ、彼は心配そうに私の顔をのぞき込んだ。

「はい。
すみません、困らせてしまって」

「いや、いい。
それだけ俺との生活を楽しみにしてくれていたのは、嬉しかったからな」

僅かに、彼の口もとが緩む。
それで私も嬉しくなるのはなんでだろう?
「でも、なんか頼め?
というか俺がケーキを食べたいから付き合ってくれ」

「はい」

メニューを見ながらちらりと彼をうかがう。
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